今回はアレニウス分析での2つの特徴的なデータ操作を行っていることに注目して見ることにします。その第一は現場力の程度に対する対数演算であり、もう一つは職場の活性度に対する逆数演算です。この両方の操作によって現場力が極端に高い場合の影響を減じ、職場の活性度が低い部分の影響をかさ上げする一方で、職場の活性度が極端に低い場合の結果を割り引いて評価することになるのです。ちょっと難しいですが以下にその理由を示します。
もともとの独立変数をx、従属変数をyとする時:
yの対数をとった値Yのxの逆数Zに対する変化の割合(傾き)は
Y=log(y)
Z= 1/x
とすると
dY/dZ = −x2/y dy/dx
となり、 もともとのyとxの変化割合をxの2乗に比例して重み付け、yの値の逆数に比例して重み付けることになります。このことは、yの大きさが大きくなるほど評価を小さくする一方、xの値が非常に小さい時の重みを小さくするという操作をしていることになります。実際、xとyの関係がアレニウスの式に従う時、図に示すようにS字型のカーブが直線に変換され、数値の大きい部分が抑えられ、小さい値が強調されるという「少数意見の尊重」とも言える操作が行われていることがイメージできるでしょう。そして、この分析では、そのような操作を行った後で直線の傾きという大局的な指標を抽出するのです。この一連のプロセスは、少数意見にも配慮しながら多くの人の意見に耳を傾け、最終的には大局的な判断を下すという、まさに経営に求められる方法論とも言えるのです。
従ってアレニウスの分析を現場力アンケートに適用することは、第8回の回答の信憑性についての考察を大変よく表現していると言えるのではないかと思います。
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