-連載企画- ガス空調- |
第三回 建物の消費エネルギーの目安 |
好評の連載企画「ガス空調」の第三回目のテーマは、ちょっと趣向を変えて「知っていると便利な数字のお話」です。例えば街中を歩いていると目に付くたくさんのビル、あなたはそのビルで必要な消費電力や冷房能力が予想できますか?もちろん、そこに入っているテナントの業種や使われている設備などを詳細に調べなければ分からないと思われるかもしれません。でも、そういう数字は、実際のところ特別のことがなければそれほど大きくは変わらないのです。そういうざっくりした分析って、ビジネスでは案外重要です。
各種建物の最大電力負荷及び最大熱負荷
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事務所
(標準型)
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事務所
(OA型)
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病院
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ホテル
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店舗
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スポーツ施設
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住宅
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電力負荷 |
50
|
71
|
50
|
50
|
70
|
70
|
30
|
熱負荷 |
給湯 |
(W/m2) |
16.3
|
16.3
|
46.5
|
116.3
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23.3
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814.0※
|
18.6
|
(kcal/m2h) |
14 |
14 |
40
|
100 |
20
|
700※
|
16
|
暖房 |
(W/m2) |
58.1
|
34
|
95.3
|
77.9 |
93.0
|
122.1
|
34.9
|
(kcal/m2h) |
50
|
39.5 |
82
|
67 |
80
|
105
|
30
|
冷房 |
(W/m2) |
104.7 |
123.3 |
104.7
|
87.2 |
139.5
|
122.1
|
46.5
|
(kcal/m2h) |
90
|
106 |
90
|
75 |
120
|
105
|
40
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※:スポーツセンターの給湯負荷は建物規模〔m2〕の影響が少ないため、実数値で示す。
(上段MWh/y、下段Gcal/y)
出典:「都市ガスによるコージェネレーションシステム計画・設計と評価」
(社)空気調和・衛生工学学会(一部加筆)
とはいってもそんなに難しいことは何もありません。上の表が理解できればそれでオーケーです。全部の数字を覚えるわけにもいかないので、もうちょっと詳しく見てみましょう。
まず下記の2つの数字は、業種が違ってもあまり大きな変動はありません。
電力負荷
ビルで使われる電気の量は、大体一平方メートル当たり50〜70W程度といわれています。最近はパソコンなどOA機器が使われることが常態化していますから、一声70W/m2と覚えておけば大きく間違うことはないでしょう。もちろん冷房用の電力は、ここには含まれません。
冷房負荷
これは施設によって多少のばらつきがあるようですね。一平方メートル当たり大雑把には100kcal/hぐらいでしょうか。
それ以外の暖房や給湯負荷は、用途によって大きく異なっており、ちょっと代表値では表せそうもありません。特に給湯負荷は、オフィスビルとホテルでは一桁近い違いがあります。ホテルではお風呂など大量にお湯を使いますから当然といえば当然ですね。
暖房は、給湯負荷ほどではありませんが、やはり業種ごとのばらつきが大きいですね。店舗などでは、外からの人の出入りが多いことなども暖房負荷を大きくしている要因かもしれません。
ビルの大きさ
もちろん、エネルギー消費を見積もる時には、ビルの床面積が推定の起点になりますから、実際の数字を見つけてくればよいわけですが、おおまかな目安として、小規模ビル(3000m2以下)、中規模ビル(10000m2以下)、大規模ビル(10000m2以上)という区切りがあるようです。
【例】
延べ床面積5000m2、地上9階、地下1階のビルを考えてみましょう。このビルの場合、
電力消費量≒70W/m2×5000m2=350kW
冷房負荷≒100kcal/hm2×5000m2=500000kcal/h≒170USRT(冷凍トン)
(1冷凍トンは約3000 kcal/h)
となります。まあ、あたらずとも遠からずといったところでしょうか。電力および冷凍以外のエネルギー消費量についても、上の表を使えば業種ごとに計算できます。是非実際のビルに当てはめて計算してみてください。
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