-連載企画- ガス空調- |
第二回 建築物の省エネ基準 |
「ガス空調」の第二回目のテーマは、建築物の省エネ基準です。
建築物の省エネルギーは、地球温暖化抑止のためにも推進しなければなりません。そのために、日本では省エネルギー法という法律が制定されて、建築物の用途や設備の種類ごとに省エネ基準が規定されています。
そこで、今回は建築物の省エネ基準において使用されている2つの係数について解説をします。ちょっと難しいですが、がんばって勉強しましょう。
年間熱負荷係数:PAL(Perimeter Annual Load Factor)
Perimeterという単語には、「周辺、外周」と言う意味があります。PALとは、建物の周辺からどのくらい熱が出入りしているかの指標、すなわち断熱性能を示す指標をPALと言います。具体的な定義は次のようになります。
ここで言う屋内周囲空間というのは、外壁・窓等を通して外部の影響を受ける建築物の内部空間のことを言います。すなわち、建築物周囲部分の壁から5mの距離までの空間を指します。また熱負荷とは建物の用途ごとに決められた空調の標準的な運転時間における壁・窓からの貫流熱+日射熱+周辺部分での発生熱量+換気による熱負荷の年間積算値です。計算されたPAL値が小さいほど断熱性能が高く、省エネ性に優れた建築物であると言えます。

PAL指標における周辺部の概念
エネルギー消費係数:CEC(Coefficient of Energy Consumption)
PALが建築物の省エネ性を計る数値であったのに対して、CECは設備の省エネ性の指標になります。CECは対象とする設備ごと(空調、換気、照明、給湯、エレベータ)に規定されていますが、考え方は皆同じです。空調に関するCECは、CEC/ACと言い、下記の式で定義されます。
ここでACは空調(Air Conditioning)のことを指します。ここで年間空調消費エネルギー量は、空調設備が一年間に消費するエネルギーの量を示し、空調設備の定格入力と年間運転時間を掛けて算出されます。
一方、年間仮想空調負荷は、建物の用途や立地などを考慮した空調負荷の想定値の積算値です。PAL同様、設備の省エネ性が高いほどCECも小さくなることになります。
省エネルギー法では、上記の2つの指標に基づいて5,000m2以上の新築建築物、増改築や大規模改修を伴う建築物の省エネ性能を定めています。
詳しくは下表をご参照下さい。同じ指数でも建物の用途によって基準が違うようですね。理由を考えてみるのも面白いかもしれません。
表2(告示3別表第1抜粋) |
項目 |
ホテル等 |
病院等 |
物品販売
業を営む
店舗 |
事務所等 |
学校等 |
飲食店等 |
集会所等 |
工場等 |
PAL |
470 |
370 |
380 |
300 |
320 |
550 |
550 |
- |
CEC/AC |
2.5 |
2.5 |
1.7 |
1.5 |
1.5 |
2.2 |
2.2 |
- |
CEC/V |
1.0 |
1.0 |
0.9 |
1.0 |
0.8 |
1.5 |
1.0 |
- |
CEC/L |
1.0 |
CEC/EV |
1.0 |
- |
- |
1.0 |
- |
-
|
- |
- |
表3(告示3別表第1抜粋) |
CEC/AC |
空気調和設備の性能基準 |
CEC/V |
換気設備の性能基準 |
CEC/L |
照明設備の性能基準 |
CEC/EV |
昇降機の性能基準 |
Ix |
給湯にかかる循環 配管及び一次側配管の長さの合計を全使用湯量の日平均値で除した値 |
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省エネ法に定められた指標の基準値 |
また、5,000m2未満の建築物についてはPAL/CECを用いずに、ポイント法あるいは簡易ポイント法で評価することが認められています。
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