< Emerging Technologies へ戻る

            先を行く燃料電池 

―りん酸形燃料電池―

 

環境にやさしいエネルギー源として近年燃料電池が脚光を浴びているのはご案内の通りですが、燃料電池と一言でいっても実際にはいくつかのタイプがあります。家庭用で実用化が急がれている固体高分子形(PEFC)や効率が高い次世代燃料電池として期待が高まっている固体電解質形(SOFC)や溶融炭酸塩形(MCFC)など様々な方式が提案され、東京ガスを含め各社が開発にしのぎを削っています。

これら華々しい燃料電池開発の影で、地味ですが着実に足元を固めている技術にりん酸形の燃料電池があります。すでに富士電機システムズさんから1998年に発売開始され、国内でも20機近い稼動実績のあるこの電源システムは、家庭用などの用途にはちょっと大きいものの業務用のコジェネレーションシステムとして現実的な選択肢になっていく可能性を秘めているのではないでしょうか。開発途上の技術である燃料電池では、装置寿命を加速的に評価する手法もまだ十分に開発されていません。したがって、どのくらい使えるかということは、実際に何時間動いたかということによって評価するしかありませんが、富士電機システムズさんのこれまでの長年の研究開発および実地での経験から4万時間の製品寿命を確認し、さらに6万時間の製品寿命を持った製品が市場導入される予定だそうです。

 

  

   ■ 燃料電池技術のおさらい ■

      燃料電池発電装置の構成要素

お約束ですので、ちょっとだけ原理について解説しましょう。

リン酸形燃料電池システムの概要

ご承知のように燃料電池というのは水の電気分解の逆ですから、水素と酸素を原料にして電気を発生させます。しかし、現在原料として供給されるのは純粋な水素ではなく天然ガスなどの水素を含んだガスですので、まずこれらのガスを水素に変換する必要があります。この働きをするのが改質器です。また、電池で発生する電気は乾電池と同じように直流の電気ですが、電力会社が提供する電気は交流ですので、これもそのままではうまくありません。

 

ブロックダイアグラム

そこでインバータという機械を使って直流を交流に変換してやるのです。
その他にガスの中に含まれる硫黄分を取り除く脱硫装置や、全体の調和を保つための制御装置など、様々な部分から燃料電池システムは成り立っているのです。

 

      りん酸形燃料電池の開発のキモ

燃料電池では電極となる固体、イオンの通り道を作る電解質(りん酸)の液体、そして燃 料の水素や酸素といった気体という三つの相がうまく接触し続けることが一番肝心です。
燃料電池の原理
急にパワーを上げようとすると反応するための燃料が欠乏しますし、電解質をあまり気体に多く触れさせると蒸発してなくなってしまいます。電極も腐食などによって劣化してしまいます。とりあえず電気を起こすことは簡単にできる燃料電池ですが、実用に供するためには多くの開発努力とノウハウの蓄積が不可欠なのです。



   ■ どんなところで使われているのか? ■

富士電機システムズさんで開発された燃料電池は100kWという容量を持った製品ですので、家庭のような小さな電気容量しかいらない用途には使えません。家庭用途には大体装置が馬鹿でかいので、大金持ちでもなければ設置することさえままならないでしょう。また、排熱を効率よく使うことのできる熱需要の大きな用途に適しているともいえます。具体的には病院やホテルなどが考えられるかもしれません。確かに燃料電池は、排熱をうまく回収することによって高い効率を得ることができますが、単純に電気を安く提供するという視点だけで捉えるとイニシャルコストの高さなどのハードルもあり、必ずしも現実的な選択肢にはなりにくいのも実情です。したがって、下水処理の過程でこれまで活用されていなかった消化ガスから燃料電池でエネルギーの回収を図るような合わせ技が必要なのかもしれません。もともと下水の汚泥処理は減容化(量を少なくする)が目的だった訳ですから、燃料電池をおまけ的な位置づけにすることが可能になるのです。また、国などのの補助金制度を活用した装置導入も現時点では重要なオプションでしょう。


燃料電池導入の補助制度(平成17年度実施分)

補助制度/(窓口)

適用対象者

対象設備等

補助内容

新エネルギー事業者支援事業(資源エネルギー庁)

経済産業省が認定した燃料電池発電設備導入事業者

50kW以上
省エネ率10%以上

事業経費の1/3

地域新エネルギー導入促進事業(NEDO)

地方公共団体(NPOなどを含む)

50kW以上
省エネ率10%以上

事業経費の1/2

LPガスコージェネレーションシステム導入事業(LPガス振興センター)

システムが供給する熱及び電力は民生用又は業務用に使用されること

単機で50kW以上
省エネ率5%以上

1/3又は42,000千円のいずれか低い額とする。

住宅点建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(NEDO)

建築主等

  • 新築・増改築の建築物の消費エネルギー 削減量10%
  • 既築の建築物の消費エネルギー削減量20%

事業経費の1/3

1:補助制度には審査があります。
2:単年度の補助事業なので実施内容が変更されることがあります

情報提供:富士電機システムズ

 

   ■ おわりに ■

今回情報を提供してくださった富士電機システムズさんは国内で唯一社、商用の燃料電池を開発されているメーカーさんです。富士電機システムズさんは、今後エネルギー源の多様化が進展していく中で燃料電池もそのうちのひとつのオプションになるだろうという見通しの中、これまでほとんどのタイプの燃料電池の開発に携わってこられました。最初にこの技術に取り組まれたのが1961年ということですから、もう40年以上にもなります。商売的には、なかなか難しい点もあるこの技術をこれだけの長い時間にわたって取り組んでこられたメーカースピリットには頭が下がる思いです。東京ガス・エンジニアリングも、環境にやさしいこの技術を今後とも応援していきたいと思います。最後に情報提供いただいた富士電機システムズさんにお礼を申し上げます。

 

△ページトップへ