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見えなかった領域に光を当てる

高濃度一酸化炭素センサ

 

はじめに


一酸化炭素(CO)というのが非常に危険なガスであることは、比較的良く知られています。COは低濃度でも人体に深刻な影響を与えるため、ppm(百万分の一)レベルの微小な濃度を測ることの出来る計測機器が世の中に出回っています。少量でも危険との認識から、これまで1000ppmを超える高い濃度の一酸化炭素の計測に注目が集まることは殆どありませんでした。高い濃度のCOは、その濃度にかかわらず「危険」と認識されてきたのです。

出荷を待つ携帯型COセンサ

しかし、実際には非常に高い濃度といってもそれが1000ppmの時と1%の時では大きく意味は異なってきます。例えば火災現場での鎮火の確認のように、燃えカスから出る高い濃度のCO検知にもニーズがあることがわかってきました。普通、センサというのは計測したいニーズにマッチするように開発が行われるものですが、逆に新しいセンサの開発により今まで計測できなかった領域を計測できるようになることによって様々なニーズが生まれてくることもあるのです。ここで紹介する高濃度COセンサは、その一例です。

 

 

――――― 今まで見えなかった領域に光を当てる。

人々の安全に貢献するための新しいテクノロジーが産声を上げようとしています。

 

 

開発したのは職人気質の中小企業


新しく開通したつくばエクスプレスの柏たなか駅に程近いところに、このセンサの開発メーカである坂口技研さんはあります。都心から僅か30分ほどの場所にあるとは思えないようなのどかな場所で、近所には東京大学のキャンパスやサッカーの競技場もあるなかなか良い場所でした。

センサの製造設備

 

社長の坂口さんは、もともと金型の職人さんで長年大手自動車メーカ向けの部品製造をされていらっしゃいました。しかし、試作の繰り返しを通して製品を開発していくという従来の生産手法が、CADやシミュレーションなどのコンピュータ技術の発達によって衰退していくだろうと見通して、あえて安定した機械部品生産から撤退し、新たなセンサーメーカへの道を選ばれたのだそうです。

 

 

 

生産設備に見る確かな技術力

 

工場を見学してまず驚いたのは、整理整頓の行き届いた工場内部です。床に物が散乱しているところなど全くありません。

最先端の生産設備

大きな生産機械が所狭しと置いてある作業場は、ちょっと手狭な感じはしましたが、年代モノの金型プレス機械から最新鋭のコンピュータ制御の切削装置までが、実に機能的に美しく配置されているのです。

社長によれば製品というのは、きちんとした場所で作ってあげなければいけないのだそうで、その哲学が社内の隅々まで及んでいる印象を持ちました。

たくさんの金型は企業の財産

 

 

自動車という非常に高い信頼性を要求される製品の部品を作ってこられた実績がそういう考えを生んだのかもしれませんが、そういうきちんとした雰囲気の工場の中に坂口技研さんの高い技術力を感じました。

 

 

 

 

製品のほとんどを内製化


普通、製造業といっても、組み込む部品やケースなど個別のコンポーネントを自社で作ることはめったにありません。自社の強みを生かせる部分にのみ注力して、あとはアウトソースをするのが常識といってもいいくらいです。ところが坂口技研さんは、その全く反対を行っているのです。電子回路基板を除く殆どの部品を内製化しています。大手メーカから購入していたある部品が製造中止になると聞いて、そのメーカの製造設備ごと引き取ってしまったものもあるというから驚きです。「「委託先の部品がなくなったから製品が作れません」などという言い訳は許されない」、そんな意気込みが自社主義にこだわる理由なのだそうです。

 

 

一酸化炭素センサの概要

評価中のセンサモジュール

 

● 構 造

開発されたCOセンサは、接触燃焼式と呼ばれる一般的なものですが、測定レンジが0.005〜5%と非常に広いのが特長です。このセンサの構造上の特長を表1にまとめました。

 

 

 

 表1 COセンサの構造上の特長

 
高性能COセンサ
従来型接触燃焼式
構成
非白金線+非白金、非パラジウム触媒
白金線+白金、パラジウム触媒
構造
触媒を円筒状に焼成、
多孔構造で反応表面面積を確保
触媒ペーストをコイル全体に
表面張力で塗布した球状構造

 

このような構造を持ったセンサにすることによって:

  一酸化炭素を二酸化炭素へ変換する効率が良い →  高濃度の検知が可能

  担体の熱容量が小さく小さなインプットで温度変化 →  低濃度の検知が可能

というダブルメリットが得られ、通常のダイナミックレンジ(0.03〜0.2%)を大きく上回る性能を得る事が出来ました。

センサの製造設備

 

 

● 性 能

ほぼゼロから5%を超える領域で高い直線性を持っており、メタン、エタン、プロパン、CO2、水素などのガスに対して高い選択性を持っています。また長期安定性についても6000時間以上に渡って変化が起きないことを確認しています。

 

 

 CO以外のガスに対する特性を示すグラフ

● 特 長

  1. 広範囲の濃度測定
    0.01〜3.00%までのCOを計測します。
  2. 高い選択性
    メンテナンス用アルミケース
    選択性に優れ、COだけを瞬時に測定します。
  3. 小型で軽量
    電池式で携帯も容易です。
  4. 万全のアフタフォロー
    ・ 販売後も定期点検をご案内します。
    ・ 機器は、専用のケースに入れて運搬します。(写真)
      専業メーカーならではきめ細かな対応でサービスします。

● 仕 様

  品名 型式
高濃度CO測定器 TGSGHD
構成 測定器本体 一式
センサユニット 一式
ポンプ 一式
電源ユニット 単三乾電池6個実装(ニッケル水素またはアルカリ)
連続使用時間:2.5時間
採取管 先端脱着式プローブ付き伸縮型採取管
採取管フィルタユニット 一式
レザー製ケースカバー 一式
測定器本体外寸法 W74.4×H177×D47
仕様 測定ガス 一酸化炭素
精度 ±10%RD
測定モード 1.ピークホールド
2.瞬時値
濃度表示 7セグメントLED
表示内容 3桁表示:0.00〜3.00%
3%以上は表示器点滅
電源投入後の暖気時間 150秒
ヒートクリーニング 初期電源投入後のみ30秒間
ゼロ調節 プッシュスイッチ後5秒間
電池電圧低下 電池LED赤点灯

 

● 用 途

  • ガス機器の経年劣化を数値で評価
    機器から放出される一酸化炭素濃度を高いレベルまで数値で評価できるようになることにより、より詳しく機器の劣化を評価することができるようになります。部分的なバーナーの劣化などの機器の全体的な劣化に至る兆候を見つけることができるようになります。


    一酸化炭素が発生する状況:
    外気(酸素)が少ない状態で物が燃焼する。
    不完全燃焼が起こり、COが発生する。

    ホコリや油詰りによる換気不良や燃焼器具の経年劣化によっても不完全燃焼が起こります。
    こうした状況の発生を確実に把握することができます。
  • 火災現場の鎮火確認
    火災現場において一旦鎮火したと思われた場所から再び火の手が上がることがあります。こうした場所からは高い濃度の一酸化炭素が出ていることがあります。また、消防隊員の安全確保のためにも高濃度CO検知機は活躍します。

 

 

おわりに


ちょっと見せたいものがあると言って社長に連れて行かれたのが、工場の前にある大きな池でした。今年の夏に社長自ら設計して作った”ビオトープ“だそうで、フィルタによって浄化された清水が流れる小川にはたくさんのメダカが泳いでいました。社長いわく、この池もお客様に買っていただく製品の一部なんだそうです。ビジネスモデルとかアウトソーシングとか、とにかくカタカナだらけの昨今ですが、草やメダカといった自然の暖かさを忘れずに血の通ったビジネスをしていきたいという社長のメッセージだと理解しました。

社長自ら設計したビオトープ。メダカが泳ぎます。
気持ちよさそうに雨に打たれる狸の置物

 

ちょっと頑固ともいえるメーカさんですが、社長以下この会社に働く人々の目に曇りはないと見ました。TGEも心のこもったこのセンサを世の中に押し出すお手伝いをしたいと思っています。

 

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