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設備の悲鳴に謙虚に声を傾ける技術

アコースティック・エミッション(AE)

 

 

技術の起源

アコースティック・エミッションという技術をご存じでしょうか。30〜40年前にアメリカで開発された技術で、様々な構造物の劣化診断を行うことができる技術です。もともとは有名なアメリカのベル研究所で研究が始められ、その研究者がスピンアウトしてPhysical Acoustics Corporationという会社を作って世に知られるようになりました。実は、その由緒正しいベル研究所の正統を受け継いでいる会社が東京渋谷にあるNippon Physical Acoustics(NPA)社です。東京ガスでもNPAさんと共同でずいぶん前からこの技術を活用して構造物の検査が行われているのだそうです。

 

いったいAEって何?

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AEセンサーのタンクへの貼り付け

言葉を見ると、アコースティックというのは「音響」でエミッションは「放出」といった意味ですね。くっつけると音響放出ということになります。要するに腐食の進展や岩盤の移動などによって起きるわずかな音の発生を高感度のマイクロフォンで受信し、その信号を解析することによって診断を行う技術がAEです。

 


どんなことができるのか

 

タンクの劣化診断の様子。複数のAEセンサーをタンクに貼り付け同時にデータを収集します。

たとえばタンクの底板の腐食の程度の評価ができます。金属の腐食が進行すると元の金属が錆になり、その時に錆が割れる音が出るのだそうです。すでに国内で170基以上のタンクのデータとその時の腐食の様子がデータベース化され公開されています。音は金属の中を伝搬していきますから、必ずしも腐食しているその場所にセンサーを付けなくても劣化の様子をモニターすることができるすぐれた技術です。これは超音波やX線などによる一般的な劣化診断技術とは大きく異なる特徴です。また圧力容器の割れなどでは、進展しない割れからはAEが出ず、進展する割れからAEが出ます。いわば動的な腐食の状況が把握できるということで、小さくても大きな被害につながる有害な割れが検出できるわけです。

 

AEのむずかしさ

マイクロフォンをつけて音を聞くだけで腐食が検出できるAEですが、ちょっとわかりにくいところがあるのも事実です。

解釈が難しい

計測した音と、その音を発生させた原因を一対一に特定するのはとても難しいことです。ちいさなひび割れの総体として観測される信号を、どのように解釈すればいいのでしょうか。このことは言いかえるとAE信号の物理的な意味合いがはっきりしないとも言えるかもしれません。

再現性が悪い

ひび割れや錆の進展といった現象は、定常的に発生するものではありません。したがって、測定を行うたびに同じようなデータが得られるとは限りません。これもAEを理解しにくいものにしている原因の一つです。

大雑把にしか分からない

普通の劣化診断に技術は、ひび割れの深さが5mmで長さが200mmといったようにきわめて定量的な結果が得られます。これに対して、AEというのは全体として劣化の進行の程度を大雑把に把握することしかできません。AEではこれをグレーディングと呼んでいます。実はユーザーの本当に知りたい価値というのは、あと何年で改修工事をしなければいけないかといった大雑把な情報であることが多いのですが、細かい数字に慣れている人にとってはAEによってもたらされる情報量の少なさに不満を持つこともあるようです。

これからがAEの時代

NPA社では、AEのためのハードウエアの販売および検査の委託業務の両方を行っていますが、最近では委託業務の比率が高まってきているのだそうです。これは前にも述べたように、単純な機械操作だけで診断ができるのではなく、そのデータの解釈という難しい作業が必要なことによるところが大きいようです。技術を習得するために、長い時間と努力を必要とするAEを自社に取り込もうとする企業が少ないことが、結果的にNPA社への委託の増加につながっているのかもしれません。また、AEというのはすでに完成された技術ではなく今なお進歩をつづけているのだそうで、そうしたことがマスプロ化を困難なものにしているもう一つの要因なのかもしれません。

構造物のすべての劣化を数値化して把握する―理想的にはこれがユーザーの求めるニーズなのかもしれません。しかし、大きな橋や建物、タンクなどの構造物は、無限ともいえるたくさんの要素が絡み合った存在です。その劣化をすべて定量的に把握することは、不可能とは言わないまでも非常に大きなコストと時間がかかるのは否めない事実でしょう。社会が成熟化し、非常に多くの構造物をできるだけ長く使わなければいけないこれからの時代こそ、AEのような技術がその真価を発揮するのかもしれません。

 

AEの応用先

AEは実に様々な対象に適用されています。下記はその内の幾つかの例です。詳細についてはお問い合わせください。

大型圧力容器の欠陥診断
パイプラインの腐食診断
地上円筒型貯蔵タンクの腐食診断
配管のリーク検出
変圧器の絶縁油の絶縁劣化評価
鉄道橋梁の劣化診断
岩盤斜面の安定監視
航空機の疲労劣化診断

 最後に

どこかはわからないけど建物が発する悲鳴に謙虚に耳を傾ける。大がかりな診断や修理は、その小さな悲鳴が聞こえてからでも遅くはないのです。AEとはそういう技術なのです。東京ガス・エンジニアリングでもNPAさんと協力してAE技術による検査診断を行っています。ご質問やご意見などありましたらお気軽にお問い合わせください。

 

 

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