第一段階(HOP) ガスと光の関係?
最初にちょっとだけ物理のお話です。
ガスというのは、いくつかの原子が集まってできた分子から成り立っています。例えばメタンは炭素Cと水素Hからできていますし、水蒸気だったら水素Hと酸素Oからできています。細かい理論はおいて置くとして、それぞれのガスは特定の波長の光を強く吸収するという特徴を持っています。簡単に言うと赤い光をよく吸収するガスもあれば青い光を良く吸収するガスもあるのです。ガスが吸収する光はひとつだけの周波数(色)というわけではなく、いくつもの波長の光を吸収します。
したがって、メタンガスが漏れているところにメタンによく吸収される光(※1)をあててやれば、その吸収の度合いによってガスの存在を知ることができそうです。
※1 具体的には波長1.6537μmの赤外線を使います。
第二段階(STEP) いろんな要因をキャンセルする方法
メタンに吸収される光を当てれば良いのですから、なんだか簡単にレーザーメタンできそうな気がしてきませんか?
残念ながらそう簡単には問屋が卸しません。それでは何が難しいのでしょう・・・?
そうです。どのくらい光がメタンに吸収されたかを計測するかという問題があるのです。それは単に受信する光の信号が小さいというだけの問題ではありません。光の吸収というのは、特定のガスによって吸収されるだけではないのです。例えば空気中に漂っているチリに乱反射してしまったりすることもあるでしょう。送信機から送り出された信号が受信された時には、メタンガス以外のいろんな要因が絡み合っているのです。工場や路上のような環境下では、とてもそうした誤差要因を排除することはできません。
ではどうするか。ここが頭の使いようなのです。どうするかというとメタンガスに吸収される波長の光と、ちょっとだけ色の違うメタンに吸収されない光を交互にだして、受信側で、その二つの信号の大きさを比較するのです。二つの光はまったく同じ空間を通って伝播しますから、空気中でのゴミの様子などの条件はまったく同じはずです。ただひとつ違うのは片方の光がメタンに吸収されるのに対して他方はまったく吸収されないということです。つまり、この二つの光の強さを比較することによってメタンガスによる吸収だけをうまく抽出できるのです。実際のレーザーメタンでは、もっと複雑な処理をやっているのですが、基本的な概念はここで説明したことと同じです。どうですか。とてもスマートなやり方ですね。
雑音影響をなくすためのトリック |
第三段階(JUMP) 跳ね返った光をみる
基本的な原理は、もう理解していただけたと思います。あとは、出した光をどうやって受けるかの仕掛けです。装置の真ん中にはレーザーダイオードという素子が埋め込まれています。そこから、前に説明したようにちょっとだけ周波数の変化するレーザー光線が打ち出されています。この光は、空中のメタンガスに吸収された後、例えば地面に反射して戻ってきます。反射して帰ってくる光はとても微弱なので、レンズでその光を集めて受信素子に送り込むのです。
レーザーメタンの原理 |
15年前のレーザーメタン
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温故知新 最初からこんなに小さかったわけではないのです。
レーザーメタンの研究を東京ガスは長い間やってきました。最初のころはレーザーダイオードのような小型の素子などありませんでしたから、ガラス管に入った大きなレーザーを振動を抑える除振台の上にのせて使っていました。光を集める仕組みも今のようなレンズではなく、大きな反射望遠鏡を使っていたのです。ずいぶん大げさな仕掛けですね。
でも、こうした装置の開発を通して蓄えたノウハウの蓄積が、現在のスマートな装置に生きているのです。
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★レーザーメタン検知器の詳しい内容および環境関連の応用については、
ビジネスパートナーのアンリツさんの詳しい文献がありますので、そちらをご覧ください。
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→ ★レーザーメタン検知器と応用事例
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