結構変わってますね、とよく言われる。(笑)まあ、本人もそれは否定しないし、それは誉め言葉といえば言えなくないと勝手に思っている。これまで、他の人が右に行くというときには左に行くような行動をしてきた気がする。他の人たちが何で自分のようにしないのであろうともどかしく思うこともしばしばあった。まあ、人がどのように考え、どのように行動するかはそれぞれの個人の自由であるわけで、筋のいいことを考える人もいれば、どうにもならない人もいると思っていた。
ところで人が物事を考える仕組みは同じではなく、いくつかのパターンがあるとコロラド州立大学のテンプル・グランディン教授は言う。物事を文字で考える「言語思考型」と絵で考える「視覚思考型」に分かれるといい、更に後者は、具体的な映像をイメージして考える「物体視覚思考」と、パターンや抽象的なイメージで考える「空間思考型」に分かれるという。教授自身も自閉スペクトラム症と診断される視覚思考タイプなのだという。
視覚思考型の人は、言葉を扱ったり文字を書いたりすることが得意でなかったりするので、学校の勉強がうまくできないこともあるらしい。でも、そうした人たちは機械の設計やメンテナンスのような場面においては、全体の構造を視覚的にとらえることができるので、より良い設計を考えたり、問題のありかを指摘したりすることに優れていることもあるという。極端に複雑化し老朽化してきている我々の社会において、今後視覚思考型の人がもっと注目されるべきでないかと教授は指摘している。
私自身、こうしてエッセイなどを書ているので言語思考型ではないかと思われるかもしれないが、全くそうではない。どちらかといえば空間思考型に近いのではないかと思ってる。本の中には簡単なテストもあるのでやってみると面白いかもしれないが、私自身はだんだん年を取るに従って言語思考型から空間思考型に変わっていったのではないかと感じる。最近は小さい文字で書かれた説明資料などはどうにもならない。(単に年を取っただけかもしれないけど。)
まあ、私自身がどのパターンであるかはどうでもよいのだけど、思考のメカニズムにいくつものバリエーションがあるということをまず認めること、それが大事だと教授は言う。最近「ダイバーシティ」と言っていろんな人の立場や考えを認めましょうという風潮がある。それはまあそれでいいことだと思うのだけれど、思考一つをとってもそこにはいくつかのパターンがあるということを理解することが大事なんだと思うのだ。自分と違うことをいう人がいても、それは脳みその中のエンジンの仕組みが違うのだから当然のことなのである。いいとか悪いの話ではないとは言えまいか。
参考文献:テンプル・グランディン著、中尾ゆかり訳 『ビジュアル・シンカーの脳 「絵」で考える人々の世界』 2023、NHK出版
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