仕事をする上で「安全」に関すること以上に大切なことはないだろう。だから不幸にも災害が発生したときには、その原因を突き詰めて再発防止のための方策をとることはとても大事なことである。そうした改善の積み重ねが今日の現場の安全の礎になっていることは間違いない。このような取り組みは、安全だけに限ったことではない。仕事の上で起こった様々な問題や失敗にしても、それを直視して修正を重ねることによって提供するサービスや製品の品質は高まっていくに違いない。
問題がなんであれ、その発生プロセスを追究していくと、多くの場合根本原因にたどり着く。そしてその原因を取り除くことによって事象の再発は防げるということになる。普通はそれでめでたしめでたしということになるのだが、ちょっと気になることを思いついた。それは、その根本原因を取り除くための仕掛けがうまく働かなかったとすると、同じようなトラブルがまた起こってしまうということだ。何を言っているのかと思われるかもしれない。問題を解決するための仕掛けを取り除けば、また問題が起こるのは自明なことではないかと。うーん、それはそうなんだけどね。
例えば、機械が破壊する時に応力集中という現象が原因になることがある。部品の細くなったところに力が集中してかかることによって、金属が耐えられなくなって破断してしまうという故障モードである。ここで応力集中が原因であると判明したとき、問題を解決するための2つの方法があることに注意したい。一つは破断した場所に、より強度の高い部品(厚さを増すとか)を配置することによって応力集中に耐えるような設計に変更する。ある意味わかりやすい対応方法であり、このようにして問題の解決が図られることが多いかもしれない。もう一つの方法は、応力集中によってその金属が破断しても、最悪の事態が防げるように設計を変更することだ。後者の対応は、大げさに言えば機器の設計思想の変更を伴うのに対して、前者は設計の思想には触れずに数値的に改善を行う対応ということになる。
もう少し端的に言うと、その問題が起きた原因を@金属の強度が不足したこととするのかAクリティカルな部位に応力集中が発生したということとするかの違いである。もちろん、いずれの対応策をとっても当面の問題は回避できるし、どちらの対策をしても未来永劫問題が回避できるという保証もない。でも、前者の対応をしたときには、もしも想定した以上の力が同じ場所にかかれば、同じ問題がまた発生してしまうのである。問題回避の防波堤は強度の増加という一点しかない。
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