これまでずっと技術開発をしてきた。いくつかの製品を開発し、世の中に送り出してきた。もちろん、その陰にはうまくいかなかったたくさんの失敗作がある。まあ、誰でもそんなものだと思う。時々どうやればヒットする新製品を生み出せるのですかと聞かれることもある。市場の声に耳を傾けることはもちろん大切なんだろうけど、なんかもう言い古されていて新鮮味がない。では本当にどうやったら当たり製品やサービスを生み出せるのだろうか。
ところで、仕事をやっていてすごく生産性が悪い時と良い時があるような気がする。生産性が良い時は、お客様もはっきりしてゴールに向かって突っ走っているときだろう。大変かもしれないけど、関係している他の人たちと仕事を分担して仕事を進めているとき、やった仕事はプロジェクトの欠くことのできないワンブロックになっているはずで、ブロックを積むようにカチッと埋め込まれて全体が進展していく。達成感もあって楽しい仕事の側面だ。
これに対して生産性が悪い時というのは、自分の仕事の境界線がはっきりせず、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、ふらふらしているときかもしれない。何日もかけてレポートをまとめたつもりでも、書き終えるころにはなんかピントがずれたようで、誰にも見せずにゴミ箱に捨てられることもある。何やってんだかと自分が嫌になることもあるだろう。まあ、そういうことの連発の日々をずっと送ってきた。少なくとも研究開発なんて言うのはそんなものである。そういう努力も実は決して無駄ではないんだけど、研究員でもずっとババばかりでは面白くない。何とかやりがいのある生産性の高い仕事をしてみたいと思うのは道理である。どうすればいいのか。
だいたい世の中のニーズなんていうものは、今の時代どんどん変わっていると考えた方が良い。DX時代では、人はネット検索でどんどん新しいものを見つけてはそちらに乗り換えていく。目まぐるしく変化する市場ニーズを絶えず追いかけていると、それだけで疲れてしまうだろう。逆に言えばいつも後追いをしているので、いつまでたってもニーズにぴったりと整合した仕事はできないのかもしれない。今やっている仕事だっていつまで続くかわからないから、若い世代の人たちはプロジェクトにあまり思い入れも持たないような気もする。テーマはエコでも、そのプロジェクトそのものがどんどん消費されているといったら言い過ぎか。
でもね、一つの製品やサービスでがんばっていると、それが当たるかどうかの潮目みたいなものがだんだん見えてくるような気がする。(いつまでたっても潮目が来ないときもあるけど。)とにかく潮目が来る前には、いくら頑張っても波には乗れない。でも、よく耳を澄ませ目を凝らして市場の様子を見ていると、そのうちに自分の方に潮目が向いてくる時が必ずある。それは異なる二つの正弦波が、ぴたりと一致するような瞬間だ。物事は万事上がったり下がったりの繰り返しである。そしてそれぞれの物事は、あるタイミングで共鳴しあい、そしてまた分かれていく。その様子を見極めることがビジネスにおいても大事なことだと思うのだ。だから、ちょっとだめだからと言ってすぐにやめず、少しうまくいったからと言っておごらない。そういう姿勢こそがサステナブルな技術開発なんじゃないかと思う。
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