ブラックホールの可視化

 
  Vol.223
2019年8月15日
 
     
     

先日、世界で初めてブラックホールの可視化に成功したというニュースを見た。何でも電波望遠鏡をいくつも使って地球規模のサイズの望遠鏡を仕立て、それぞれのアンテナで受信された信号をスーパーコンピュータで膨大な時間かけて演算してやっと得られた結果なのだという。

得られた画像はオレンジ色をしたリングのような形をしていた。下の方が分厚くてぼやけたイメージは、「ふーん、これがブラックホールねえ」というくらいのものだった。5500万光年以上離れた宇宙の果てを見ているのだから、高精細な映像が得られないのは仕方がないが、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したような素晴らしい映像を期待していた私は、その画像を見ても残念ながらときめかなかった。

なぜこのボヤっとした映像が本当のブラックホールだといえるのか。何でも同じデータを使って別の手法で計算した結果も、お互いによく似ていたのだという。

「えっ、それで?」

たった三回の計算結果が大体同じになったというだけで、これが真実であるといえるのか。さらに今回の結果は、これまでの理論的な予測ともよく合うのだという。専門の科学者から見れば、この結果は十分説得力のある「ブラックホールの真の姿」なのだろう。しかし、その理論とやらがさっぱりわからない素人の我々には、3回の計算結果があったくらいで真実の姿といわれてもちょっとすぐには受け入れられない。大体3回の結果だって全く同じというわけではないし。

今回の結果がインチキだと言っているのはない。実際に計算をした科学者たちは、慎重にデータを吟味してこの結果を得たに違いない。科学という枠組みを駆使して、データを操作しこの結果を得たのだ。しかし、気の遠くなるような距離にある天体からの電磁波の強度は猛烈に小さく雑音の中に埋もれるような信号であるに違いなく、そのデータ処理は特に慎重に行わなければならない。著名な科学者や有名な大学の研究者が論文の著者であるからと言って、そのことが結果の信頼性を保証するわけではないのである。

とはいっても5500万光年先のブラックホールを近くに行って直接見るすべがない以上、その結果が正しいかどうかを絶対的に判断することはできない。今回の画像も、他の計算結果と合致した程度には正しいというしかないのである。この結果が「真実」に近づくためには、さらに多くのデータを重ねていくしかないが、残念ながらどこまで行っても本当の真実に到達することはできないのである。観察とモデル化を基礎とする科学という枠組みが持つ限界がここに見えてくると言ったら言い過ぎだろうか。






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