音楽について

 
  Vol.221
2019年6月4日
 
     
     

趣味が音楽鑑賞や楽器の演奏という人がいる。ピアノやギターでいろんな曲をささっと弾ける人は本当にうらやましい。私も時々キーボードにチャレンジしたりするのだが、結局長く続かない。音楽鑑賞にしたって、あの交響楽団の演奏はうまいとか言われても、正直その差はさっぱりわからない。どうすれば音楽が理解できるのだろうとずっと思っていた。

そんな質問に答えてくれそうな本を最近見つけた。教育に関する本なのだが、その本によれば音楽とは

『もう消えてしまった音」がまだ聞こえて、「まだ聞こえない音」がもう聞こえているという、過去と未来への拡がりの中に身を置かないと経験できないもの』

なのだという。確かに瞬間瞬間の音だけでは音楽は構成されることはなく、その前後の音との関係がその音という物理現象を芸術に昇華させるのは間違いない。

この話を読んで似たようなものを思い出した。歴史だ。何年何月何日にこういうことが起こったという事実の列挙だけでは、それぞれの事柄の意味というのは分からない。例えば関ヶ原の合戦という事柄は、戦国時代という大きな歴史のうねりの中で理解されるべきものであり、1600年に関ヶ原という場所で大きな戦があったという事実だけではその意味というのはよく分からない。戦が起こった後に、日本がどうなったかということも関ヶ原の戦の意味に影響を及ぼすに違いない。

この本には音楽について以下のようにも書いてある。

『今ここには存在しないものとの関係を維持していなければ、音楽というものは演奏することも聞き取ることもできない。 』

なかなか含蓄のあるフレーズだと思う。多分、この主張は音楽だけに限らないのだろう。目の前で起こっている様々な事柄は、今ここに存在していないいろんな事柄と関係している。その見えない関係の存在を信じること(目には見えないので信じるしかない)ができたとき、その事柄の意味が見えてくるのではないだろうか。
さっぱりわからなかった音楽を理解する糸口がちょっと見えたような気がするのだが。さてどんな音楽を聴いてみようか。

 

内田樹 『街場の教育論』 2008年、ミシマ社






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