足が速くなる方法

 
  Vol.219
2019年4月4日
 
     
     

小学校のころすごく足が遅くて運動会の徒競走とか大嫌いだった。100m先のゴールが無限の遠くにあるように見えた。何とかしてそのコンプレックスを克服したいと思って、なんと中学校で陸上部に入部した。部員は皆陸上用のスパイクを持っていて、特に短距離は18oもある釘みたいなスパイクをシューズに何本もねじ止めした。オニツカと書いた袋に入ったスパイクをもって部室に行くのはちょっと誇らしい感じがした。

しかし、もちろん現実はそんなに甘くない。大体足が遅くて陸上部に入ってくるものなどいるわけもなく、他の部員は皆俊足ばかりだ。地方では、当時「通信陸上」なる競技会があって(ネットで調べると今もあるらしい!)、それぞれの地区の記録を持ち寄って順位を決める。結構全国レベルの記録を出す選手もいて、とても私に勝ち目はない。一応の部員ではあったので、スパイクを買ってもらって毎日の練習には参加した。スパイクをはくと地面を強くグリップするので、なんかすごく足が速くなった気がするのだが、それはみんな同じことでスパイクを履いたからと言って順位が上がるわけでもない。いくらやっても大して足が速くならず、だんだん部室に行くのも億劫になって、そのうち幽霊部員になってしまった。大会があっても出場できるわけでもなく、ただ選手の走る姿を漫然と見ていた。手を早く振り、ストライドを大きくすると足が速くなると教わって、それなりに努力はしたのだが結果は全然ダメだった。いくら早く手足を動かしても、後ろから来た別の選手にどんどん抜かれてしまった。遺伝だからしょうがないと自分に言い聞かせた。なんとも悲しい青春の思い出だ。(笑)

今、そのころを振り返ってみると、もっといろいろやれることはあったのになあと思う。別に記録に残るほどの成果は上げられなかったかもしれないが、自分のタイムを継続的に記録したり、走行フォームを分析したり、工夫するところはたくさんあったような気がするのだ。走らないときにも、体操やストレッチ、食べ物だって工夫すれば効果があったかもしれない。少なくともそんな努力をすれば部活動ももっと楽しかったと思うのだが、そんなことは殆どしなかった。ただ劣等感があるだけだった。劣等感に押しつぶされて足が速くなる方法もわからず、何にもできずに終わってしまった。

今自分がいる立ち位置をどう考えるか。それは個々人の考え方によって異なる。どうにもならない地獄の底にいると思う人もいれば、バラ色の未来が広がっていると思う人もいるかもしれない。私の場合、最初から陸上部なんかに入らなければ、そんな悲惨なことにならなかったかもしないが、人生のいろんなタイミングでは中学校の部活動ほど自由な選択肢がないことも多い。そんな自分の立ち位置の中でどう生きるか。陸上部に入ってから40年以上の月日がたったが、日々直面する問題は少しも変わっていない。もちろん、いろんな状況において絶対正しい選択肢などありはしないのだろうが、陸上部に関しては40年も前のことをこんなによく記憶しているということは、その時のことがずっと心に引っかかっていたに違いない。良くも悪くもその経験は私の中に生きている。決して無意味ではなかったと思っている。

新年度になり新たな年号も決まった。新入社員にとってはまさに新たな立ち位置での生活だ。このタイミングで自分の立ち位置の意味についてちょっと立ち止まって考えてみるのも悪くない。






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