宇宙兄弟を読んで

 
  Vol.208
2018年9月5日
 
     
     

普段はあまり漫画を読んだりしないのだが、先輩に勧められて「宇宙兄弟」という漫画を読んだ。中古の本屋さんにたくさん並んでいたので、比較的安価に手に入れることができ、内容も面白かったので一気に読み進めることができた。ストーリーは、宇宙に興味を持った2人の兄弟が、NASAの宇宙飛行士の試験にパスして苦労しながらも成長していく物語である。弟の方がまず宇宙飛行士となって、日本人で初めて月面を歩くことになる。これに対して兄の方は、宇宙飛行士になった弟にジェラシーを感じながら、いまいち不器用で会社をクビになったりしつつも宇宙飛行士の道を捨てきれず努力をしていく。物語は、この兄の宇宙飛行士になっていく過程がメインに描かれている。

もちろん著者は宇宙飛行士にはなれなかったけど、子供のころから宇宙関連の話は大好きだった。まだ、10歳にもなっていなかったけど、アポロ11号のアームストロング船長が月に初めて降り立った時のテレビ中継のことは良く覚えている。ちょっとノイズの入ったモノクロのテレビ画面の向こうで、宇宙飛行士が月面をピョンピョンと跳ねている映像と、宇宙飛行士とヒューストンの会話の同時通訳が見事にシンクロしていた。それぞれの交信が終わるたびに入る「ピー」という音(スタンバイピー)が、なぜかすごく恰好良かった。

さて、話を宇宙兄弟に話をもどそう。兄がJAXAやNASAの試験を受ける過程で、何人かの他の候補と一緒に閉鎖空間に閉じ込められるシーンがある。その中で、それぞれが協力しながら課題をこなしていくのだが、時々予想もしなかったようなトラブルが発生する。急に時計が壊れたり、候補の一人が奇声を発したりするのだ。こういうことが起こると、ストレス状態に置かれている候補生たちは疑心暗鬼になってチームワークにひずみが生じてしまう。要するに犯人探しが始まってしまうのだ。(奇声については犯人は自明だけど)

しかし、実際にはこうしたトラブルは、試験を行う方が外からこっそりと一人の候補に指示をだして行われた人為的なものなのである。トラブルの指示を描いたメモが緑色の紙であることからグリーンカードと呼ばれるという。候補者の誰かが犯人だと考えるとチームワークに揺らぎがおこるのだが、もしやこれはグリーンカードでは?と思った瞬間に、候補者間の溝は埋まっていき、協力関係がもどってくるのだ。このグリーンカード、本物の宇宙飛行士の養成課程で使われているかは知らないが、狭い閉鎖空間の中に何人もの人がいて、さらにいろんなトラブルが起きたら、精神的にはかなりきつそうなチャレンジであることは間違いない。

こういうことって、宇宙開発だけでなく日頃の仕事の中にも良くあるなあと思った。プロジェクトの中で起こるトラブル、勿論メンバーの誰かのミスで起こることもあるに違いない。でも、その大部分は宇宙兄弟に出てくるグリーンカードみたいな外力によることが圧倒的に多い気がする。そんな時、誰がその問題の原因かという犯人捜しをするよりも、なぜそれが起こったかということに気持ちを持っていくことが肝心だと思う。何か仕事でトラブルや問題に直面した時、

「あー、グリーンカード食らっちまった。」

と呟いてみたらどうだろう。大切なことはチームワークを壊さず、目の前の問題にチャレンジし続けること。簡単そうに見えてこれがなかなか難しい。

 

小山宙哉 『宇宙兄弟』 講談社






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