色について

 
  Vol.205
2018年3月7日
 
     
     

私はずっとモノクロ写真を趣味にしてスナップ撮影したり、自分で現像したりしている。モノクロ写真に色はない。あるのはコントラストの違いだけ。当たり前のことなのだが、写真にはその白と黒のコントラストの相対的な違いに意味がある。白と黒のコントラストによって人や建物が表現される。

もちろん、普通の人たちはカラーで写真を撮る。今ならカメラなど一々使わなくても、スマホを被写体に向ければ結構まともな写真がぱっと撮れてしまう。なぜカラーの写真を撮らないのかと聞かれることも多い。よくわからないけど、カラーってなんか複雑すぎる気がしていた。写真はシャッターさえ切れば撮れるのだろうけど、自分でコントロールすることはとてもできない気がした。

ところが最近ちょっと気持ちに変化が出てきた。とはいってもカラー写真の現像を始めたというわけではない。写真ではなく水彩画を始めたのである。鉛筆やペンでスケッチするだけでなく、絵の具を使って色を塗る。これがなかなか楽しいので、ちょっと色彩のことを調べたりするようになったのだ。

モノクロ写真は白と黒の2つが全てだったのだが、色の世界になると補色という考え方が重要らしい。補色というのは色同士を混ぜると灰色になる二つの色の組み合わせである。例えば、赤と緑はそれぞれ補色の関係にある。また補色の関係になる色を隣に並べると、それぞれの色がよりはっきり見えるという。補色というのは、モノクロ写真の白黒のコントラストとよく似ている。確かに白と黒を混ぜればやっぱり灰色になるし、白と黒を並べればお互いをはっきりと見える効果があるだろう。でもカラーの場合には、補色の組み合わせは一種類ではなく無限にあるのである。色の三原色を混ぜて作ったどんな色にも補色は存在する。

ところで、人の目というのは、目の前の色彩を調和させるように働くという(ゲーテの色彩論)。調和させるといっても何かよくわからないかもしれないが、例えば、赤い色をずっと見た後に暗いところを見ると、補色である緑色が見えるようになる。実際には赤しかないのに、目はその補色を勝手に用意してバランス(調和)を取ってしまう。こういうことを指すらしい。

東京ガスのコーポレートカラーは赤と青である。会社のマークにもユニフォームにもこの2色が使われている。これまであまり気にしたことはなかったのだけれど、赤と青というのは補色の関係にはない。この色を調和させるためには黄色が必要になる。つまり赤と青を混ぜて作られる紫色の補色の関係にあるのは黄色なのである。そういえばユニフォームの赤と青の部分をずっと見ていると、実際には灰色のユニフォームが赤と青との周りで少し黄味がかって見えるような気がしなくもない。コーポレートカラーに使われている2色には、それぞれに意味が込められている。それはそれでいいのだけれど、そのカラーを含む全体をバランスさせるための色のことは考えられたのだろうかなどと考えてみるのも面白い。

ゴッホの絵には鮮やかな黄色や青などが使われている。色彩論的にはち密な計算がされているのだという。それは単に色の組み合わせというだけではなく、見る人の印象も含めて色とその配置を絶妙に制御するのだ。補色と調和というキーワードで絵を眺めてみるのも面白いのではないかと思うし、こういう考え方って、色だけでなく世の中のいろんな事柄にも適応できるのではないかと思えてきた。

参考文献:布施英利、色彩がわかれば絵画がわかる、2013、光文社新書






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