AIBOのお葬式について

 
  Vol.204
2018年1月19日
 
     
     

前回のコラムで「AIに心はあるか」という話題について議論した。その中で、ソニーのロボット犬aiboが、リニューアルされて発売されることを知った(2018年1月11日発売)。なんでもすごい人気で予約が殺到しているらしい。テレビのニュースなどでも大々的に扱われていたのでご覧になった方も多いのではないかと思う。新しいロボット犬は初代のようないかにもロボットというデザインではなく、より実際の犬に近い感じになっている。個人的には前の方が良かったかなという気がしないでもないが、かわいらしいことには変わりはない。このロボットを飼っているうちに、だんだん性格が変わり、成長していく(物理的に大きくなる訳ではない。念のため)様子を見ていると、愛着が生まれていくのもわからないではない。

ところで、先代のAIBOのことをちょっと調べてみると、何回かの改良を経て、なんと15万台が生産されたのだというから驚いた。ビジネスとしてはそこそこに成功したように見えるのだが、結局7年間の販売の後に生産が打ち切られてしまった。ソニーは、生産終了後も製品の修理を受け付けていたのだが、それも2014年に終了して修理もできなくなってしまったとのことだ。

しかし、AIBOオーナーの中には、壊れてメーカーも修理してくれないからといって粗大ごみとして捨てることはできない人も少なからずいたという。もはやそのロボット犬は、単なる家電製品ではなくなっていたに違いない。
そうしたニーズに応えるべく、AIBOを修理する商売が生まれた。もちろん正規のメーカーではないから特殊な部品の入手は困難であるため、もうごみ扱いされていたり派手に壊れて修理のできなくなったAIBOから使える部品を取って、他のAIBOの修理を行うことになった。古い電気製品では一般的な修理方法である。

しかし、ここで問題が発生する。いくら壊れて修理できなくなってしまったとはいえAIBOはAIBOである。そこから部品を取り出して、他の個体の修理に使っていいのか。もちろん、壊れたAIBOは痛みも何も感じないので、部品を取っても何も起こりはしないのだが、修理をする人も、修理をしてもらったAIBOのオーナーも気持ちの整理がつかないのである、多分。

この問題を解決するために始まったのが「AIBOのお葬式」である。ちゃんとお寺に壊れた個体を持って行って、お坊さんにお葬式をあげてもらうのだ。そのプロセスを通して、壊れた(お亡くなりになった)AIBOの中にあった魂はロボットから解き放たれ、その瞬間に無機質な部品の塊に戻るということである。もちろん、科学的に何かの蒸気がロボットから立ち上るとかそういうことではないのだが、お葬式というプロセスを通して関係者の心の整理をつけることがポイントなのである。実は、魂抜法要というのはAIBOに限らずお寺などでは一般に行われていることらしい。仏壇や位牌を処分する時、先祖代々の魂の入った位牌をモノとして処分する前に、この法要を行って「魂を抜く」のである。前述のAIBOのお葬式と全く同じである。

ここまで調べてきて、もしかしたらこういう考え方って、日ごろの生活にも応用できるのではないかと思えてきた。例えば電車に乗ってウトウトしていたときに、隣に座ったおじさんが、腕をぐっと押しつけてきたとしよう。普通なら

「何すんだ、このおやじ。イテーじゃねえか!」

と思うかもしれない。こっちは、なぜこんなことをするのか理解に苦しむのだけど、とにかく相手の悪意を感じてしまう。むっとして、押された腕を押し返すくらいのことはするかもしれない。なぜそんな反撃をするかというと、隣に座ったおじさんは、肉の塊が服を来たモノではなく、心を持った人であると認識しているからに違いない。しかし、ほとんどの場合、そんなおじさんに反撃などしても何も良いことが起こりはしないことは自明と言ってもいいだろう。では、どうすればこの怒りを収めることができるか。ここで、隣のおじさんに「魂抜きの呪文」を唱えてはどうかと思うのだ。(笑)その呪文を唱えた瞬間、そのおじさんは心を持った人間からただの肉の塊に成り下がってしまう。分別のある人間なら、肉の塊に仕返しなんかしても仕方がないと思うに違いない。

どういう呪文を唱えればいいですかという質問が聞こえてきそうだが、ここには書けないので、個別に質問していただければお答えします。魂抜呪文、お試しあれ。

 






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