デザインについて

 
  Vol.202
2017年11月7日
 
     
     

最近開発した製品がグッドデザイン賞を受賞した。ちょっとしたイベントで工業デザインのデザイナーの方と知り合ったことがきっかけで、開発中の粘度計のデザインをお願いしたところ、なかなかイケてる感じに仕上がった。そこで、デザイナーさんのお勧めもあり、今まで全く縁のなかった賞に応募することになったのだ。一次審査を通過し、2次審査は審査員との対面審査を経て、あれよあれよという間に、有名な賞を受賞したのだ。今年のグッドデザイン賞は約1000社が受賞したのだそうで、六本木の高級ホテルで開催された受賞祝賀会は、受賞した会社の人たちでごった返していた。展示されていたたくさんの製品は、どれもスマートな感じのものばかりで、その一角に展示されているわが社の製品を見つけると、ちょっと誇らしい気がした。

ところで勤務しているエンジニアリング会社は、質実剛健なガスプラントなどを作ってきた会社であり、一番気にすることは品質の高いプラントの機能の実現。その実態は配管、バルブ、タンクなどの複合体で、必要に迫られてその機械の構造は決められており、デザインという言葉はもっとも遠いところにある概念と思われてきた。実際、今回の受賞の社内での評判は必ずしも良いものばかりではなかったのも事実だ。

そもそもエンジニアリング会社というのは、ユーザーのニーズに応えるために、メーカーとユーザーの間に立って様々な工夫と調整をするべきであり、いわゆるデザインのような外見にこだわることは、単なるコストアップでしかないと考えるのも、まあ無理はないところである。

他方、グッドデザイン賞の展示会で他社の製品を眺めてみると、実に様々なものが並んでいることに気が付く。必ずしも、エレガントな形をした製品というわけではないような物もたくさん受賞している。例えば痛みを伴わない注射針がグッドデザイン賞の大賞を受賞したこともあるという。そこには特段の芸術的な意匠があるわけではないだろう。最近では「モノ」だけではなく「コト」もデザインの対象なのだそうで、物理的な形を伴わなくてもデザインの範疇としてとらえられるらしい。では一体デザインって何だろうということが気になってきた。ということで、グッドデザイン賞を実施している団体のホームページ(注)に書いてあるデザインとは何かについて見てみると:

デザインの中心には何が存在するか? 長年、デザインと対峙してきた我々が導き出した答えは「ヒト」です。それは時に「ユーザー」という言葉で語られ、時には「社会」という大きな言葉で語られますが、デザイナーが何か新しい物事を設計する際には必ずその中心軸に「ヒト」または「人々」が存在し、そして「そのヒト(人々)には何が必要だろうか?そして、何を設計するべきか?」を考えます。これが、現代の「デザイン」という言葉の定義において最も重要な中心核だと我々は考えています。

「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」この一連のプロセスが我々の考えるデザインであり、その結果、実現化されたものを我々は「ひとつのデザイン解」と考えます。

このくだりを読んで「あれっ」と思った。なぜか、それは我々エンジニアリング会社がユーザーエンジニアリングとして大切にしていることと、そこに書かれていることが全く同じなのである。単なる無機的なハードとしてのスペックではなく、使う人のことを第一に考えてもの作りをする、いつも中心にあるのは人なのだ。
そういえば、デザインをお願いした時に、デザイナーさんから聞かれることは、この装置をどのように使うのかということだった。どんなシチュエーションで使われ、ユーザーは誰か。それは、我々エンジニアの問いと少しも違わない。エンジニアリングとデザイン、全く対極にあると思っていた二つの概念。実は全く同じプロセスの二つの側面に過ぎなかった。ちょっと面白いと思うのだが。

 

(注)
 公益財団法人日本デザイン振興会
 https://www.jidp.or.jp/ja/about/whatsdesign






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