2017年6月2日
Vol.198
 
     
楽しく学べる「知財」入門

最近読んだ新書の題名である。題名にある通り、弁理士である著者が特許や商標、意匠さらには著作権などに関して卑近な例を挙げて面白おかしく説明した本である。この本を読むと特許がバンバン書けるようになるとか、すごい商品名を思いつくかというと、そういうことはないのだろうけど、知的財産に関して全くの素人であってもスラスラっと読めてしまいそうな楽しい本だったので紹介しようと思う。

本の帯にはまず、広島東洋カープや中央大学、さらにはシンシナティレッズや智弁学園が使っているCの赤い文字のロゴについて、著作権があるのかどうかという話が書いてある。そういえばどれも似たようなデザインで、もしかしたら問題でも起きているのではないかと思ったのだが、中を読んでみると、こういう文字には著作物性はないのだという。そのほかにも「ペコちゃん人形」の商標やノンアルコールビールに関する特許紛争などどこかで見たことのあるいろんなものを、著者は知的財産という切り口から鋭い分析を加えている。経緯にわからないことがあると、権利所有者に問い合わせをしたりしてなかなかきめ細やかな分析をしているのも面白い。

当社を含め、ただ単に良い製品を安く作るということだけでは生き残っていけない時代に皆、直面している。どんなビジネスを展開するのが良いのか、これまでの経験だけでは判断をつけかねるような状況に頭を抱えているのではないだろうか。そんな中で知的財産の重要性は、いくら言っても言い過ぎることはないのではないかと思う。

会社と会社、あるいは人と人の結びつきによって、あうんの呼吸で何となく仕事が進んでいた時代は過ぎ去り、今や欧米的な契約社会の中でビジネスを展開せざるを得ない面倒くさい時代に我々は生きている。特許のような自社ビジネスのアドバンテージをしっかり意識しておくことは、厳しいビジネスの世界で生き残っていくために必須の事柄である。もちろん弁理士の先生ほど高い専門性を持つことは難しいかも知れないが、いつも自らの業務を知的財産としてとらえる癖のようなものがつくようになれば、エンジニアリング会社の底力がもっと強靭なものになるような気がする。少しやってみるとわかるのだが、知的財産という切り口から見ると技術開発というのもちょっと違って見えてくることも実感している。同じ開発をやるなら「特許になる技術」を開発した方が良いに決まっている。出願すればお小遣いだって儲かる。紹介した本が、そうした方向性への一歩になればと思う。

以前、アメリカのある大学教授と話をする機会があった。その時、アメリカにたくさんの弁護士がいて、多くの訴訟が起きている現状について、そんなことは決して自慢できる話ではないと言っていたのを思い出した。自らの力でトラブルを回避して穏やかな社会を維持していく自浄作用とでも言える力を、その社会が失ってしまっていることの表れが訴訟社会ということだという。ちょっと残念だけど、そういう社会に我々も飲み込まれてしまった。とりあえず知的財産についてもう少しまじめに考えてみることにしよう。

参考文献:穂積健市、楽しく学べる「知財」入門、2017、講談社現代新書

 

 

 


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