2014年9月5日
Vol.164
 
     
ルーブル美術館を見学して

夏休みを利用してフランスを旅行した。フランスのいろんなところを見て歩いたが、もちろん最後はパリでルーブル美術館を見学。最初に驚いたのは音声ガイドの装置。日本の美術館などでもよくあるやつだが、流石世界のルーブルはちょっと違う。使われている機器はなんと任天堂の3DSというゲーム機で、音声だけではなくて映像も出る。たぶん展示室に無線の発信機が設置してあるらしく、自分のいる場所を機器が勝手に認識してその部屋にある絵画の説明を始める。どこか別の作品を見たい時には、順路を示してくれるという優れものだ。最初、ちょっと慣れが必要だが、わかればこの上なく便利。最近ちょっと元気のない任天堂さん、こんなところで頑張っていた。

とまあ、ガイド装置の使い方がわかったころで美術館ツアーの開始。美術に詳しいわけでもないので、とりあえず有名な作品を探して歩いた。ミロのビーナスにサモトラケのニケ、モナリザ、ナポレオンンの戴冠式などなど、超一流の作品が目白押しだ。休館日明けとあって、館内は大変な混雑で、有名作品の周りは人だかりになっていた。巨大な部屋の中のガラス張りの壁に埋め込まれているモナリザは案外小さく、前にいる人たちの頭越しに見るその絵は、まあそんなものねという感じだった。

絵に近づくと多くの人が奇妙な行動をとりだすのに気が付いた。くるっと回って絵に背を向けるのだ。国籍に寄らずほとんどの人がスマホを持っているので、モナリザと自分を一緒に写真におさめようというわけだ。折角世紀の絵が目の前にあるのに、その絵に背を向けるとは、なんだか妙といえば妙な話だ。ちなみに近所にあるオルセー美術館では写真撮影は一切禁止だが、ルーブルの方はフラッシュを焚かなければ写真は問題ないとのこと。この辺の統一感のなさもフランスっぽい。

なんでもモナリザは、一度ルーブル美術館から盗難にあったことがあるのだそうで、その時の話がこの作品をさらに有名なものにしたらしい。本来、盗難にあうことと絵の価値とは何の関係もないはずだが、そういういろんなめぐりあわせが絵の価値を決めているのも事実だ。素人が何を言うかと言われそうだが、正直サモトラケのニケなんて首も手もない薄汚れた像にしか私には見えなかった。

ルーブル美術館を見学して思ったことは、ものの価値というのは案外脆弱な基盤の上に成り立っているんだろうなということだった。ルーブル美術館にある芸術作品を悪いというつもりはまったくないのだけれど、その価値の根拠は、必ずしもその作品の絶対的な属性によるものではなく、付随する事件やドラマによるところが大きいのである。したがって、それを見に来る私を含めて多くの民衆は、いくら絵を眺めてもその価値がわかるわけもなく、「その絵は有名だから」という理由で、ありがたく写真を撮って帰っていく。そういえばデジカメで順番に作品の写真を撮っていく人を何人も見たが、正直ちょっと笑ってしまった。

作品の中には、長い間見向きもされなかった作品が、最近になって急に評価されたものもあるという。ものの価値というのは、所詮その程度のことなのだろう。

 

 


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