2014年1月21日
Vol.157
 
     
オクシモロン

この言葉を聞いたことがあるだろうか。日本語では撞着語法(どうちゃくごほう)というが私はそんな言葉を聞いたこともなかった。もともと英語の oxymoronとは、ギリシア語のoxys(鋭い)とmoros(愚かな)を合成したことばで、両立しない言葉をわざと連結することを言うらしい。〈熱い雪〉〈燃える氷〉〈賢い道化〉〈残酷なやさしさ〉などがそれに当たる。

普通に考えると熱い雪があるわけはないし、氷が燃えるはずもない。(メタンハイドレートは燃える氷かもしれないけど、ここではその話は置いておこう。)では、このような語法は、いつも間違いかというと、そういうわけではない。むしろ複雑な内容を簡潔に表現する修辞法として用いられている場合もあるのだという。確かに、一言では表せないような微妙な状況を表す時に、あえてこのような表現をすることはあるような気がしないでもない。

さて、厳しい時代に生き残るために、企業は自らの持つ強みを更に強化して行くことが求められてきた。選択と集中は当然の戦略である。思いつきで他業種に飛び込んでみても成功する可能性などある訳もない。自らの強みをしっかり認識してその延長線上に新しい活路を求めることは当然の事だ。メーカーはさらにメーカーらしく、ガス会社は更にガス会社らしく、選択と集中というのはそういうことだろう。

しかし、今時代は大きく転回しつつある。自らの強みだと思っていた事業が、根こそぎその優位性を失うことは、決して珍しいことではない。液晶メーカーとして名を馳せた電機会社が、海外の安い製品の攻勢に対抗するために、原資を得意分野に集中したことが、却ってそれ以降の事業展開の足かせとなってしまった。選択と集中という戦略を是とすれば、決しておかしなことをしていたわけではないと思うが、結果は大変なことになってしまったのである。

これからの時代を考える中で、オクシモロンという修辞法がヒントを与えてはくれないだろうかと考えた。エンジニアリングらしくないエンジニアリング会社とか、メーカーらしくないメーカーとか、そういう展開がこれからのキ―戦略にはならないかと思うのだ。

オクシモロンというのは、全く関係のない言葉をくっつけた訳ではない。ひとつの言葉を十分に吟味した上で、あえてその反対側に意味を振ってやる、とそこに深みが生まれてくると言うテクニックだ。会社の戦略においても同じことは言えないだろうか。自らの強みを十分に把握し、その上で敢えてその反対に戦略を振ってみるのである。それは必然的に事業の周辺領域ということになるかもしれないが、全く関係のない分野ということではないだろう。自らの強みとその対岸にあるコンセプトを結び付けることによる鮮明なコントラストが大切と言ったら理解してもらえるだろうか。

 

参考:世界大百科事典 第2版

 

 


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