2013年7月19日
Vol.150
 
     
仕様と仕様の隙間について

エンジニアリング会社でなくても、仕事を受注する時には仕様をしっかり決めることが重要だ。後になってあれが無いとか、ちょっと長すぎるとか、そういうことが起こらないように、あらかじめ寸法などをきちんと定めておく。当然の事だろう。仕様を公開して入札を行ったりする時でも、曖昧さが生まれないように仕様を工夫することも大切だ。

ということで仕事をする上でとても大切な仕様なんだけど、改めて仕様って何なんだろうと考えてみた。出来上がった製品というのは、仕様に書かれている明示的な事柄、たとえば縦横高さという寸法だけで出来上がっているわけではない。もう少し細かく見れば、その寸法だって、角の部分の仕上げの仕方をどうするかということもちゃんと決めないといけないかもしれない。その角の仕方を決めればおしまいかというと、もちろんそんなことはない訳で、触った感じとかそういう微妙なニュアンスも最終的な物理的な製品にはあるのである。そのように考えていくと、仕様というのはどこまで行ってもきりがないということになる。逆説的にいえば、製品の仕様を全て記述する仕様を決めることは有限の時間では出来ないと言ってもいいかもしれない。

こんな風に考えてみると、仕様の項目と項目の間には隙間があると言えるだろう。物を作るときには、そこに隙間があることを十分に認識することが大切なのではないかと思うのだ。いくらきちんと仕様を決めても、その隙間については、発注した人と受注した人との間での合意形成はなされていない。書いてないのだから仕方がない。もちろん、そこには“常識”というセーフティネットが張られているので、あまり突飛なことが起こる可能性はそれほど高い訳ではないが、仕様に書かれていない隙間の部分の誤差を集めて行くと、最終的には看過できないような誤謬が顕在化してくる可能性は十分ある。

明示的に書かれている仕様をきちんと満たしていないと、お金を払ってもらえないので、納入者は時間と金をかけてその仕様を達成する。ちょっとでも仕様に満たないとまずいので、そこまでやるのかと思うほど仕様に敏感になるのも致し方ないことなのかもしれない。でも、そういう風にして仕様を満たした製品には、仕様の隙間への配慮は全くないので、ちょっとでも仕様が想定していないようなことが起こると、極めて脆弱な特性を露呈してしまうのではないかと思うのだ。

じゃあ、どうすれば仕様と仕様の隙間は埋まるのか?もちろん簡単な答えがあるわけではないけど、古いワインには底に澱(オリ)が溜って全部を飲めないように、ちょっとだけ神様に捧げものを供えるように、少しだけ仕様に遊びを持たせることも大切なのではないかと思うのだが、どうだろうか。そしてもう一つ大切なことは歴史だ。今まで動いていたという歴史は、動かすことはできない。その上に新しいものを少しずつ新しいことを載せて行く。慎重に。少しずつ。

 

 

 

 


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