2010年2月10日
Vol.106
 
     
小説の書き方

Stephen KingのOn Writingという本を読んだ。題名は「小説の書き方」くらいの意味だろうか。

Kingはアメリカのベストセラー作家らしい。が、彼の詳しい作品のことは知らない。この本の中で、Kingは小説を書くことを化石探しのようなものだと言っている。小説を書くことと化石探しのどこが似ているというのだろうか。小説を書くというと、まずはあらすじを考え、登場人物を考え、それから丁寧に文章を組み上げていく、そんな建築作業のようなイメージを持っていただけにちょっと不思議な感じがした。

しかし、Kingはストーリーなんか考えちゃダメと一喝する。自分の経験に照らし、正直に文章を書けば、いつの間にか傑作が出来上がるという。そんな馬鹿なと思われるかもしれない。正直に文章を書けば傑作が生まれるのなら、誰でもベストセラー作家になれるはずなのに、現実はそうなってない。全くその通りだ。

でも、自分の経験した技術開発でも似たようなところがあるなあ、と最近思うことがある。若いころは、あれこれ頭をひねって新技術を提案し、なんとかそれを大きくしようとあがいていたような気がする。ところが最近は、目の前にある状況を良く見て、プロジェクトが進むように助言したり、直接の開発とは関係ない裏方の仕事をしたりすることが多くなった。それは粘土の塊から人形を作るというより、少しずつ周りの土を取り除いて地面に埋まっている人形を掘り出す作業に近い。流れに身を任せるという言い方をしても良いかもしれない。

ここで大切なことがひとつある。それは、そのプロジェクトがうまくいくと強く信じることができるかどうかということだ。何やっても駄目だと思っている人が、いくらそのプロジェクトの手伝いをしても、決してそれは良い方向に向かわないだろう。それはたぶん小説を書くときにも同じことなんだろうと思う。小説を書こうとする前に浮かんだインスピレーションのようなものが、強く頭の中にあり、それを書きあげる意思が持続しない限り作品が形になっていくことはないだろう。違う言い方をすれば、掘り起こす前から化石がそこにすでに埋まっていると信じることが最も大切なことなのだ。

新しい技術や製品。それらは我々が考える遥か前からすでに出来上がっているのである。我々ができることは、それを考古学者が筆を使ってそっと化石を掘り起こすように、大切に少しずつ掘り出す作業をすることなのである。まあ、そのことを信じるかどうかは別にしても、そんな風に考えて仕事をしてみるとまた違った見方ができるかもしれない。

 

 

 


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