2009年7月27日
Vol.101
 
     
モールス符号を覚えること

最近、モールス符号を覚えようと勉強をし始めた。正確に言うと、ずっと昔学生の頃に一度覚えて資格も取ったことがあるので、覚えるというよりは思い出すという方が正しいかもしれない。携帯電話とインターネットで世界中といつでもどこでも情報のやり取りができるこの時代に、タイタニック号の時代のモールス符号など覚えてどうすると思われるかもしれない。それはおっしゃる通りなんだけど、デジカメ全盛の時代にモノクロのフィルム写真を自家現像するくらいだから、その行動に少なくとも一貫性はあるだろう。

そもそもモールス符号なんてものが一体何だかわからない向きもあるかもしれないから、一応説明しておくと、ABCなどのそれぞれの文字に対応した短点と長点の組み合わせの符号があり、これを無線で送って情報のやり取りをする。英語の場合はEの文字の出現確率が一番高いので、時間が節約できるように一番短い短点一個の符号が割り当てられている。当然滅多に使われないZやYはもっと長い符号になるというわけだ。

実際の通信ではこれらの符号を猛烈なスピードで送信するわけだから、いちいち符号表とにらめっこしながら解読していたのではもちろん時間が足りない。そこで通信士はモールス符号を頭の中で覚えて、受信したとたんに元のアルファベットに置き換えていくわけだ。この符号を覚えるときも、短点が1個に長点が2個だからWだ、などといちいち分析してはだめだという。符号を聞いたらその文字がパッと頭に浮かぶようになるまで訓練するのだというのだが、どうやって訓練したらいいのかちっともわからない。

でも、テキストブックの中にちょっと面白いことが書いてあった。それは、モールス符号の上達というのは練習した時間の2乗に比例するというのだ。時間に比例するのではなく、2乗に比例するというところが面白いと思った。モールス符号に限らず、なにかを習得しようとすると、最初は要領を得なくてなかなか上達しない。でもどこかでちょっときっかけをつかむと、すっと上達のスピードが速くなることがよくある。2乗特性というのはまさにそういうプロセスだ。1を境目にしてそれ以前は、ぎゅっと抑えられていた出力が1を超えると急に大きくなる。

2乗に比例するということが分かったからと言って、上達が早くなるわけでもないと言われるかもしれない。でも、上達はとにかくかけた時間によってきまるということを信じることができれば、何かを習得しようとする時、なかなか成果がでなくても少しは気が楽になるのではないだろうか。そう、ものごとは頭の良い悪いでは決まらないのだ。どれだけ時間をかけたか、それが大切なのだ。

通勤の時にいつも音楽をかけていたiPodにモールス符号を入れて聞き始めた。これで時間はたっぷりかけられる。だから、きっとすぐに上達するに違いないと思っているのだがどうだろうか。

参考文献:William G. Pierpont,The Art & Skill of Radio Telegraphy 3rd Edition, http://www.qsl.net/n9bor/n0hff.htm

 

 

 


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