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2008年5月15日

Vol.082

     
1対10の法則
 
       
 

 

ビジネスにはいろんなマジックナンバーがある。7対3の法則とか8対2の法則とか、売れ筋商品や集団における怠け者の割合、さらには大リーガーの打率に至るまで、神様が決めたとしか思えないいろんな数字がある。でもたいていの場合、そういう数字というのはあまり極端な値にはならないものである。どうも神様は、そこそこの塩梅がお好きなようだ。

でも、今回はちょっと極端な数字を考えてみたいと思う。1対10。野球の試合なら完全なワンサイドゲームである。少数意見の尊重といってもちょっと少ない。こんな数字をどこで見つけたと思われるだろうか。まあ、これは観察というよりも、このくらいがいいんじゃないかと私が思っただけの数字なのだが。

1対10。それはNOとYESの比率である。誰かと話をしていると「あれはだめだ。」「この装置が悪い。」「そうじゃない。」「違う、違う。」「それは高いから売れない。」と、一から十までずっと否定形を使いっぱなしの人に出会うことがある。何を言っても否定形の連発である。もちろん、その発言にはそれなりの理由があるわけで、当の本人は別に否定をしようと思って否定形の発言を繰り返しているわけではないだろう。でも結果的にそういう人の話というのは全部否定形になってしまうのである。そういう人を見ると、ああこの人はその仕事をしたくないんだろうなあと思う。それを自分で認める代わりに、その人は何か他の対象に対して否定を連発するのだ。

こういうことを営業でやると大変なことになる。商品が売れないのはお客様が悪いと言ってしまっては、売れるものでも売れなくなってしまう。「お客様が悪い」という言葉を吐き出さないために、営業マンは身をよじってお客様の意に沿うように営業活動を展開するのである。「お客様は神様です」というのは、要するにそういうことである。

じゃあ逆に、なんでもハイハイと肯定形で答えておけば万事がうまく収まるかというと、そういうものでもない。全く自らの意思を持たずに肯定ばかりしていると、いつかどこかに流されて行ってしまう。そこには何も積み上げられることはないし、成功もない。ただ生きているだけである。まあ、それはそれで一つの生き方ではあるかもしれないが。

ではYESとNOはどれくらいの比率がよいかと考えてたどり着いたのが10対1くらいではないかと思うのだ。基本はYES。人の話をよく聞き、相手のせいにする前に自らを振り返ってみる。大体人間というのは怠け者にできているから、すぐ人のせいにしたくなるものだ。そこをじっと我慢してYESに徹するのである。これが簡単そうに見えてなかなか難しい。新入社員や異動してきた人の仕事を見て怒鳴りたくなった時、

「ちょっと待てよ、自分の教え方がまずかったからじゃないか」

と怒りを抑えて踏みとどまる勇気、それがYESの心である。ね、そう簡単じゃなさそうでしょ。そしてどこまで行ってもこれ以上はだめというところでNOのカードを切るのである。それは決断である。そうちょこちょこ切るカードではないが、どこかで切らなければいけない。そうしないと物事は前に進んでいかないのである。これも大切なことだ。

新人に怒鳴ること、もしかするとそれも決断なのかもしれない。それがギリギリの決断だと思えるなら、それはそれでよい。いずれにしても基本はYESで、ここぞと決めるときにNOを切る。大体10対1くらい、もしかしたらNOはもっと少なくてもいいかもしれない。大きな仕事をするためには我慢はさらに大きくなるに違いない。でも、どこかでNOを切ることは必要なのだ。それを忘れてはいけない。

あなたのYESとNOはどのくらいの比率でしょう。ちょっと考えてみるのも悪くないかもしれない。

 

 

 
       
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