商売のサイエンス トップへ

 

     

2006年1月19日

Vol.034

     
二つの心
 
       
 

あるテレビ番組を見ていた。芸能人が本物と偽物の二つを見極めて、どっちが本物かを当てるという番組だ。以前結構人気があった番組だったから知っている人もたくさんおられるだろう。

大体こういう番組では、どんな題材を選んでも百発百中の人もいれば、ことごとくはずして失笑を買う芸能人もいる。そうでなくては面白くないのだ。それが本当なのか、はたまた演出なのかはさだかではない。そんなことはどうでもいいが、とにかく正解を出し続ける人は一流芸能人と呼ばれ、全然当たらない人はテレビにさえ映らなくなってしまうという趣向だ。

やっぱり高級な料理を高級レストランで食べたり、世界最高の演奏者による音楽を聴いたりしなければ、一流の目利きにはなれないのだろう、などと思う。でも一方で、百発百中の芸能人と、何回やっても当たらない芸能人の距離はそんなに遠くはないのではないかとも思った。

なぜそんなことを考えるのか。できないやつはどこまでいってもできないのではないか。キャビアだろうが1億円のピアノだろうが、ちゃんと当てる人のほうがすごいに決まっている。でも百発百中で外れる人が、もし自分の考えの反対をいつも選んだとすると実は百発百中で正解ということになることに注意しよう。少なくとも全問不正解の芸能人は、ある意味において正しく問題を認識したのである。その答えがタダ逆になっただけのことだ。

このテレビ番組の例はやや極端かも知れないが、世の中はすべからく「正しいこと」と「悪いこと」に分類される。もちろん「正しいこと」の方が良いにきまっているから、私たちははそれを目指してがんばっている。がしかしである。良いことと悪いことというのは、人間が恣意的にそうだと決めているに過ぎないのではないだろうか。実は良いも悪いも大した変わりはないのである、そんな気がしてならないのだ。

もし、ビジネスにおいても正しいアプローチと正しくないアプローチがあったとしても、実はそのアプローチの選択というのはさほど大きな問題ではないのかもしれない。だって、正しいも正しくないも所詮は同じことなんだから。大切なことは、自分の進む道を信じて邁進し続けることに違いない。ひょっとすると、あのテレビ番組に出演している芸能人の中でも、いつも間違っている人のほうが、たまに間違える芸能人より早く目利きとしての実力をつけることができるのかもしれない。自分の判断の反対を選ぶという操作を学ぶだけなんだから簡単この上ないのである。

 
       
  ← Vol..033
Vol..035 →  
       


Copyright 2018 TOKYO GAS ENGINEERING SOLUTIONS CORP. all rights reserved.

個人情報のお取り扱いについて