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2005年6月13日
Vol.006
     
押してもだめなら引いてみな
 
       
 

有名な格言(?)だ。意味は、いろいろやってみようということだろうか。まあ、押してもだめなら後は引いてみるぐらいしかないだろう。それ以上、この話に何かあるというのか。

私はあると思う。物事を成し遂げるための方法には一つだけということはない。必ず複数の方法がある、ということがこの格言の本当の意味のような気がする。このことは、何も方法論だけをいうのではない。世の中のありとあらゆる事柄というのは表の意味と裏の意味が存在する。それがたとえものすごく悪いと思えることでも、反対にものすごく良いことでも同じだ。例えば海は底知れない恵みを人類に与えると同時に荒れ狂う嵐となって人類に襲い掛かる。そのどちらもが海というものの実相だ。まあ、そんなものだろう。

人の意見が自分の考えていることと合わないことはよくあることだ。そういう時、「あいつはわかっていない」というのは簡単だが、なぜその人は自分の意見と違ったことを言うのだろうと考えてみることが大切なことだと思う。自分の思っている意見がたとえ正論であっても、物事に対する認識が「正しい」ものだけだということは無いはずである。その反対意見にも幾らかの正当性があるに違いない。そう思って相手の話を聞くことが問題を解くきっかけとなることは多い。

それは技術の世界でも同じだと思う。ある理論を証明しようと一生懸命技術開発を行う。ゴールへ到達するための方法論は決してそれだけではないのだ。別のアプローチが必ずある。証明はできないけど間違いないと思う。そして、さらに言うと自分が今いる場所と解決しようとするゴールというのは、円周の上の二の点のようなイメージではないかと思う。つまり、スタートからゴール地点へ向かう方法には右回りと左回りがあるような感じだ。そして、自分がゴールへ向かうために考えている方法は、必ずしも二つの選択肢の近い方を選んでいるとは限らない。むしろ大変な方を選んでいる方が多いかもしれない。だって、それは実際大変な仕事なんだから。

そういうときこそ方向を反対に向けてみることが必要になる。つまりゴールへの道のりがすごく長いということは、反対を向けばゴールは目の前に転がっていることになるはずだから。特に自分が直面している問題がたいへんな問題である時に有効な方法だろう。そういえば二足歩行ロボットがうまく歩けるようにするための秘訣は、倒れそうになったら倒れる方向に重心を移すということだったと聞いたころがある。倒れそうなときに余計に倒れこむ戦略。これは勇気がいる。答えがわかれば何ということはないことでも、そのときは当たり前ではないのだから。
そんな時一番大切なことは、実は必ず答えは見つかると信じることだ。答えがあると信じられない人に答えが見つけられる道理がない。

 
       
 
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